ヒゲとバルボア

2018年夏から2019年春にかけてのクライミングトリップの記録

Freerider

この旅の北米最後の目的地、ヨセミテ

この数ヶ月で色んな岩場を巡ったけれど、(それは北米大陸のほんのいくつかに過ぎな

いけれど)、ここに来て、やっぱりヨセミテは特別な場所だって思った。

スケールも、クラシックルートの多さ、素晴らしさ、そして厳しさ。

やっぱりヨセミテだなあ、とマス。

どうやら私たち2人ともヨセミテに勝る場所はなさそうだって事で意見が一致。

 

だからと言って、私はヨセミテが大好きなわけじゃない。

観光地で人が多いし、キャンプ4はうるさかったり、陽が当たらなくて寒かったり。

公園内はレンジャーたちが常に目を光らせていて、なんだか居心地が悪かったりも

する。

 

でも、昔も今も、世界中からたくさんのクライマーが、それぞれの目標とともに熱い

想いを持ってやってくるヨセミテが私は好きで、いつも刺激を受けてきた。

自分にとっても毎回大きなチャレンジをさせてくれる場所がここであり、来るたびに

少しずつ成長させてもらっているような気がする。

 

私にとって今回のヨセミテは特に特別だった。

エルキャプのフリーライダーを登る。

日本を発つ前から決めていた、今回の旅の大きな目標。ビックチャレンジ!


やる気十分で挑みたいけれど、メドウから見上げるエルキャプはやっぱり大きく、

めちゃくちゃ大きく、その前に立つ自分の小ささ。

うわーこんなの本当に登れるのかな…と不安がどんどん大きくなった。

やる気満々じゃなくて、これじゃあ弱気満々だ。

 

でも、マスに言われた。頑張るためにここに来たんでしょ!って。

そうだ、そうだった!

やるからには前だけ見て登ろう、やれるだけやってみよう、と腹をくくった。

 

今回、どう登るか、というのもずいぶん悩んだ。

全ピッチ荷上げをしながら登って行く自信はなかったので、結局マスに簡単なピッチ

はリードしてもらう、という形で登ることにした。

 

フリーブラストを登り、荷上げを済ませ、いざゴーアップ!

4日間という限られた日数の中で、日陰の状態のいい時間帯も限られていて、

そして限られた自分の体力を考えると、1ピッチ1ピッチが本当に大切。

だからこそどのピッチも緊張したし、気持ちで負けないよう気合を入れた。

 

初日から疲労困憊で、2日目から身体がバキバキ。

こんなんで身体が持つのか不安だったけど、何とか4日間登り続けることができた。

 

こんなに出し切ったクライミングははじめてというくらい、今の自分の持てる力は全部出し切ったと思う。


結構頑張ったんだけどな、でも、テフロンコーナーだけ登れなかった。

出来なかったのは実質2メートルくらいなのだけど、すごく難しく、どうしても

上がっていけなかった。悔しさを感じるには程遠いくらいの力不足。

でも、他のピッチももっと苦労すると思っていたので、そう考えるとモンスター

オフィズスやピクチャーブックなどがRPできたことは、まさにヨセミテラクル!

 

下山してからすぐ悪天になり、ジョシュアツリーに退避。

フリーライダーで燃え尽きた私は、ナマケモノのフヌケクライマーとなり、ここで

全然気合いの入ったクライミングができなかった。

イクイノクス、次は登らねば!

 

フリーライダーを登ってみて、自分に足りないものが何かよくわかった。

やってよかったと心から思った。

次に繋がる、たくさんの宿題をくれたエルキャプに感謝。

そして、自分のクライミングを我慢して、これ以上ないくらいサポートしてくれた

マスに感謝。


また次、頑張ろう!