ヒゲとバルボア

2018年夏から2019年春にかけてのクライミングトリップの記録

田植え

今日は友人の田植えのお手伝い。
お米は自分で作れたらいいなあ、と思っているので、色々勉強させてもらいにいく。

記憶にあるかぎり、はじめて田んぼに入ったと思う。
田んぼのなかに一歩目を踏み出した時は、なんだかちょっと緊張した。
予想通り田んぼの下は泥んこで、足が沈む。
慣れないわたしは、足をとられ何度も転びそうになった。
でも、好きだ。この感じ。
わたしは子供の頃から、泥遊びが大好きだった。
裸足になったら、気持ちいいんだろうなあ、なんてなんて。

家にある長靴はどれも穴が開いているので、朝、このために新品の長靴を引っ張り出した。
でもヒゲさんサイズの長靴はブカブカで、余計歩きにくい。
友人は、もっと足にピタッとフィットするような長靴で、さらに足の甲にゴムの紐を巻いていた。
こうすると更に歩きやすいらしい。

田んぼには大きなおたまじゃくしが、うじゃうじゃ。
いろんな虫もたくさん。トンボも飛ぶ。
生き物の宝庫だなあ。
ここにいるはずのない毛虫も田んぼのなかに生える雑草にくっついていたり。
いったいお前はどこから来たんだ?

田植え2年目の友人夫婦。
去年は3品種収穫。
今年は去年美味しかった種類を多めに、やってみたい品種のコシヒカリも選んで、また3品種。

夫婦二人で一年間食べる量を収穫するには、どれくらいの田んぼの広さが必要なんだろう、というのはとても気になっていたところ。
へぇー、こんなもんでいいのか、というのが正直な感想。
思ったより広くなかった。
田んぼをやるハードルが少し下がる。
これくらいなら、できそうだな。

きれいで元気そうな苗。二本ずつ植えていく。
ずっと中腰で作業するから、もちろん腰はいたくなったけど、手で苗を植える作業も楽しかった。
手袋は煩わしくなっちゃって、素手で植えた。
友人の家族やお友だちも一緒に、わいわいしながらの作業。

午後は別の予定があったから、朝からお昼までのほんの少しの時間で、あっという間に時間が過ぎた。
ほんと体験ってぐらいにしか手伝えなかったけど、とても有意義な時間だった。
百聞は一見にしかず。
まだまだ知らない大変なこともあると思うけど、やってみたい。
来年から始めよう。

また一つ暮らしの楽しみが増えました。
誘ってくれた友人には感謝。

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Freerider

この旅の北米最後の目的地、ヨセミテ

この数ヶ月で色んな岩場を巡ったけれど、(それは北米大陸のほんのいくつかに過ぎな

いけれど)、ここに来て、やっぱりヨセミテは特別な場所だって思った。

スケールも、クラシックルートの多さ、素晴らしさ、そして厳しさ。

やっぱりヨセミテだなあ、とマス。

どうやら私たち2人ともヨセミテに勝る場所はなさそうだって事で意見が一致。

 

だからと言って、私はヨセミテが大好きなわけじゃない。

観光地で人が多いし、キャンプ4はうるさかったり、陽が当たらなくて寒かったり。

公園内はレンジャーたちが常に目を光らせていて、なんだか居心地が悪かったりも

する。

 

でも、昔も今も、世界中からたくさんのクライマーが、それぞれの目標とともに熱い

想いを持ってやってくるヨセミテが私は好きで、いつも刺激を受けてきた。

自分にとっても毎回大きなチャレンジをさせてくれる場所がここであり、来るたびに

少しずつ成長させてもらっているような気がする。

 

私にとって今回のヨセミテは特に特別だった。

エルキャプのフリーライダーを登る。

日本を発つ前から決めていた、今回の旅の大きな目標。ビックチャレンジ!


やる気十分で挑みたいけれど、メドウから見上げるエルキャプはやっぱり大きく、

めちゃくちゃ大きく、その前に立つ自分の小ささ。

うわーこんなの本当に登れるのかな…と不安がどんどん大きくなった。

やる気満々じゃなくて、これじゃあ弱気満々だ。

 

でも、マスに言われた。頑張るためにここに来たんでしょ!って。

そうだ、そうだった!

やるからには前だけ見て登ろう、やれるだけやってみよう、と腹をくくった。

 

今回、どう登るか、というのもずいぶん悩んだ。

全ピッチ荷上げをしながら登って行く自信はなかったので、結局マスに簡単なピッチ

はリードしてもらう、という形で登ることにした。

 

フリーブラストを登り、荷上げを済ませ、いざゴーアップ!

4日間という限られた日数の中で、日陰の状態のいい時間帯も限られていて、

そして限られた自分の体力を考えると、1ピッチ1ピッチが本当に大切。

だからこそどのピッチも緊張したし、気持ちで負けないよう気合を入れた。

 

初日から疲労困憊で、2日目から身体がバキバキ。

こんなんで身体が持つのか不安だったけど、何とか4日間登り続けることができた。

 

こんなに出し切ったクライミングははじめてというくらい、今の自分の持てる力は全部出し切ったと思う。


結構頑張ったんだけどな、でも、テフロンコーナーだけ登れなかった。

出来なかったのは実質2メートルくらいなのだけど、すごく難しく、どうしても

上がっていけなかった。悔しさを感じるには程遠いくらいの力不足。

でも、他のピッチももっと苦労すると思っていたので、そう考えるとモンスター

オフィズスやピクチャーブックなどがRPできたことは、まさにヨセミテラクル!

 

下山してからすぐ悪天になり、ジョシュアツリーに退避。

フリーライダーで燃え尽きた私は、ナマケモノのフヌケクライマーとなり、ここで

全然気合いの入ったクライミングができなかった。

イクイノクス、次は登らねば!

 

フリーライダーを登ってみて、自分に足りないものが何かよくわかった。

やってよかったと心から思った。

次に繋がる、たくさんの宿題をくれたエルキャプに感謝。

そして、自分のクライミングを我慢して、これ以上ないくらいサポートしてくれた

マスに感謝。


また次、頑張ろう!

Airbnbで休養

今日はラスベガスでアメリカ空軍の人のお家に宿泊。

エアコンの効いた快適なお部屋で1日ダラダラして過ごします〜。

 

Airbnbって本当便利。

ホテルと違って料理もできて、洗濯も出来る。

そして安い!

 

疲れを癒したら、明日ははじめてMt.charlestonへ行こうと思います。

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たまにはこういうのも必要よね。また明日からがんばろう!

さやか

エコーキャニオンのマルチを登る

朝起きると、雨がパラパラ。

はあ、今日も天気がイマイチ。

今日はマルチに行こうと準備していたのだけど、これじゃあ厳しいかなあ。

でも、しばらくすると雨は上がって来た。

空は変わらずどんよりで、またいつ降り出してもおかしくなさそうだけど、とりあえず行ってみよう!と無理やり出発。

 

山登りだけじゃなく普段の生活でも、事前に調べたり、先を読んで行動することはすごく大切。(そしてわたしはそれがすごく苦手。)

でも、とりあえず行ってみたり、やってみたりすることも、結構大事だったりする。

だって、その場に行ってみなきゃ本当のところはわからないじゃない。

はなから無理だと思わずチャレンジしてみて、良かったと思える経験は少なくない。

後悔しちゃうかもだけど。それで失敗した経験ももちろんあるけれど。

さあ、今日はどちらに転ぶだろうか。

 

1時間以上のアプローチをこなし、取り付きへ。

よし!壁は濡れてない!

が、風が強い。寒い〜。

でも来たからには登るしかない!と腹をくくって登りだす。

 

 

わたしはマルチピッチ・クライミングがすきだ!

 

どんどん高度を上げていく高揚感、

次にどんなピッチが待ち構えているんだろうというワクワクドキドキ感、

移り変わっていく景色、

時間との戦いや天気との駆け引き・緊張感、

1ピッチ1ピッチの大切さ、、、


わたしはアプローチや下降が大きな核心だったり、重たい荷上げが課題だったり。

ロープワークに混乱することも多い。

いつも何かしら失敗があり、反省があり。

だからこそ、マルチに行くと、いつものクライミングが冒険になる。

 

最終ピッチの終了点にたどり着いたとき、自分の手と足でここまで上がって来たんだと思うと、たまらない気持ちになる。

壁を抜けてトップまで上がれたらもっと最高。

そこから見える景色は、何にも変えがたい。

 

それに、マルチはチームプレーだ。それがすきだ。

チームワーク良く登れた時の気持ち良さといったら!

登り終わった時、パートナーと顔を見合わせて思わずニンマリ。

お互いに応援し合い、刺激し合い、登る楽しさ。

そして素晴らしいクライミングを誰かと共有できること。

それって、クライミングの大きな醍醐味。

 

どんなルートでも、チームオンサイトはわたしにとって最高のクライミングの形。

登りたかったルートを登れた時はもちろん嬉しいけれど、チームオンサイトできた時の嬉しさに勝るものってない。

 

 

って、この日はやっぱりめっちゃ寒かったー。

かじかむ手に気持ちが折れそうになったけど、それでも、気持ちを奮い立たせて、気合いを入れて、何とかチームオンサイトできました。

 

来てよかった。登れてよかった。

良きルートと、良きパートナーに感謝。


Marriage Box 12a, 4P in Echo

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4Pのスポートルート。3P目は、長さ40mにボルトがなんと20本!


さやか

 

石灰岩のスポート、アセフェルで登る。

この日は、キャンモアに住む日本人クライマーのみんなと登る。

キャンモア周辺のクライミングエリアはBow Valleyに点在していて、主に石灰岩スポート。

何と言っても、わたしは石灰岩が苦手だ。特にどっかぶりなやつ。

ここに行きましょうと、みんなから提案されたAcephale(アセフェル)という岩場は5.12以上のルートばかりで、見るからに厳しそう。

うーん。登れるかなあ…。

正直、前日の夜はちょっと憂鬱だった。

 

アセフェルは、キャンモアの町から車で20分ほどの近さ。

アプローチは40-50分。汗をかきかき歩く。

 

早速10代でアップし、11bのNeoconstructionistをトライ。

苦戦すると予想していたけれど、案外すんなり登れた。

かかりが良く、フットホールドも大きく、見た目より登りやすかった。

 

これで気を良くしたか(笑)、12bのトップ100をトライしてみることに。

 Bucking Horse 12b

30m以上ある長いルート。でも出だししか傾斜がなく、途中も結構休めるとのこと。

よし、やってみよう!

 

出だしは脆いので慎重に、でも無駄にパンプしないようリズムよく、を意識してグイグイ登る。

何とかこなして、レスト。

そこからの比較的簡単なセクションで、ラインを誤り、フォール。

あー、もったいなかったな。

 

このルートはここが核心といったところはなく、上部もレストを挟みながら、短い悪いセクションをいくつか越えていく。

悪いムーブが続かないので、長いけれど、比較的登りやすいのかな。

一度落ちてからは、そのまま落ちずに登り切ることができた。

 

登り始める前は、もっと全然ダメかと思っていた。

傾斜がなかった、というのが大きいけれど、でも前だったらこういうスポートルートは、悪い箇所で踏ん切りがつかず、ウジウジしてパンプして終わっていた。

フィジカルの面も大きいけれど、とにかく、わたしはスポートルートに自信がない。

でも、この春カサメリのNDDを打ち込んだことが大きかったかもしれない。

実感としてはあまりないけれど、このルートを登ってみて、スポートも少しずつ成長しているのかも、と思えた。

 

もちろん、わたしは苦手課題をもっともっと登りこまなきゃいけない。

でも、ただただ苦手意識を持つのではなく、トライすると決めたからには、まずは強い気持ちを持って、そして自信を持って一手一手出していくことが大事。

自信がなくなったり、迷った時は、今まで自分が積み重ねてきたことを思い出せばいい。

当たり前のことだけど、改めてそんな発見があった、良い1日だった。

 

と、終わりたいところだったけど、この日はそれだけでは終わらなかった。

わたしっぽいと言えば、わたしっぽいのだけど…。

 

ワンテンだったし、上部も結構安定して登れたし、次はいける!と2便目を出す。

が!変なところでラインを間違え、行き詰まり、あえなくフォール。

 

わたしはいつもそうだ。

オンサイトトライであともうちょっと、という惜しい登りをしても、次のトライはボンミスをしてRPを逃す。

その時点で結構疲れてしまっているので、次を出してももうヨレヨレでダメ、という悪循環に陥る。

今日がまさにそれだった。

 

2便目の後から、雲行きが怪しくなり、パラパラっと降り始める。

みんなも先に帰り、日暮れも近くなってきた。

今日はもう諦めてもよかったのかもしれないけれど、2便目の悔しさから、どうしても登りたくて3便目を出す。

 

集中して登っていたと思う。

自分の持っている力は全部出し切った。

でも結局、途中でヨレ落ち。

ロープにぶら下がりながら、悔しくて、情けなくて、どうしようもない気持ちでいっぱいになった。

でも、これが自分の実力。

反省点は明確で、それを直していくことで、次につなげるしかない。

自分にうんざりする気持ちが溢れ出る中、次は絶対登る、と心に決めて下山した。

 

キャンモア近郊のスポートクライミングは、正直、バガブーの天気待ちの間にちょこっと遊べれば、くらいにしか考えていなかった。

今日も、こんなに濃い1日になるとは予想していなかった。

どこでだって、どんなルートだって、本気で登れば学ぶことが大きいと教えてくれた1日だった。

 

なんだかずっとバガブーの天気は思わしくない様子だけど、ここで出来ることを思い切り楽しもう。

 

 

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Bucking Horseを登る、キャンモア在住スキーヤー&クライマーのいずみちゃん。

さやか 

長い1日 in Bugaboo〜後編〜

どうにかこうにかダート道を走りきり、ブリスコの商店に到着。

運転していたヒゲさんは疲労困憊。

でも、大変なのはここから。

 

商店のおばさんに相談すると、タイヤ交換ができそうな整備工場がある町は、一番近くてここからハイウェイを30分のラディウムとのこと。

この車でこれ以上走ることはできないので、どうにかしてそのラディウムまで行き、タイヤを買って持ち帰ってくるしかない。

公共交通機関もタクシーもない場所なので、ヒッチハイク

潰れたタイヤをアピールしながら商店に来るお客さんに声を掛け続け、何とか、ラディウムまで乗せてってくれる女性を見つけることができた。

ありがとう、を10回くらい言ってしまったかも。

でも、本当に感謝。

 

ラディウムは温泉が出る田舎のリゾート。

小さな整備工場で中古のタイヤを探してもらう。

が、同じサイズの中古はなく、新品しか選択肢はないとのこと。

ショック。

そして、1本250ドルという金額にびっくり仰天。

どうしよう…

家族会議をしていると、お店の人がスペアタイヤ用と言って、径が一回り小さい中古タイヤを持って来た。40ドル。

これで、いいんじゃない?

結局このサイズが違う中古タイヤを購入。

 

タイヤを抱え、ブリスコに戻るため、暑い中またヒッチハイク

車は結構通るものの全然止まってくれない。

作戦変更し、スーパーで待ち伏せして個別に懇願。何とか夫婦が乗せてくれ、無事タイヤとともにブリスコに戻ることができた。

 

なんだかんだありつつ、時間はまだ13時過ぎ。

一時は今日中に山に入るのは無理だと諦めていたけど、まだ間に合いそう!

疲れてはいるけど、予定通りクライミングができるかもしれない、という希望に嬉しくなる。

 

よし、戻ろう!

タイヤ交換を済ませ、再出発。

スペアタイヤがない我々は、とにかく慎重に運転するしかない。

たぶん普通の車の2倍くらい時間がかかったと思う。

 

やっと着いた。良かったー。

登山口に到着した時には本当にホッとした。

 

準備を済ませ、車のゴムを噛みちぎる小動物対策に車の足回りに金網を巻く。

17時頃登山口を出発。

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Bugabooの駐車場ではこれが必須。金網は置いてある。



ハイキングトレイルを2時間とちょっとで、Conrad Kain Hutへ到着。

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とても快適そうな山小屋。近くにキャンプ場もある。


次第に日が落ちて来るのを感じながら、BSコルを越えて氷河上へ。

BSコルは氷河やクレバスの状態もだし、浮石ばかりで落石も多く、状態がかなり悪かったー。

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BSコルを目指す。

 

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BSコル

 

コルを上がり安定した氷河を歩いて、今日ビバークするピジョン・ハウザーのコルへ。

すでに日は落ちていたけれど、月明かりがありがたかった。

岩がゴロゴロする中に、いくつかビバークスペースがあり、数パーティがここでビビィしていた。

時間は23時。

疲れてはいたけど、でも明日予定通りクライミングできることの嬉しさの方が優っていた。

思ったよりも暖かかった。ご飯を食べ、今日の長い1日を想いながら、寝袋に潜り込んだ。

 

さあ、明日は思い切り登ろう。

 

さやか